捕まっちゃって、奪われて。
「………痣…?」
もし、小さい頃に公園で転んだとしたら。
膝に痣が付くだろう。
なかなか治らないような、頑固な痣。
けど、首?
首に痣なんて…そんなの、1つしか理由、ねぇじゃん。
「……虐待、受けてたのか?」
「……」
「……」
真っ白で綺麗な首には、複数の赤と青と紫の跡。
きっとこの服の下には、もっと広範囲で、痣の色があるだろう。
東雲柚鈴は笑いも、泣きも、悔しそうにせず。ただマフラーを握り締め、俺を下から見上げていた。
「……わかりましたか?」
「……」
「私みたいな…大切にされていない子を、誘拐しても無意味なんですよ」
“大切にされていない子”。
その言葉が何故か、愛を籠らせていて。
その言葉に執着しているように聞こえたのは、何故だろう?
その理由は、なんとなく分かる。
「……実はさ」