捕まっちゃって、奪われて。
ゆっくりと口を紡ぎ始める。
「俺も…同じなんだよ」
「……?」
虚ろな目で俺を見つめて、首を傾げる。
「俺も…父親に、虐待受けてたんだ。」
***
それは運命で。
それは偶然で。
それは禁忌で。
「愛されたい」と願うのに、
「逃げ出したい」と思ってしまう。
ただただ殴る、蹴る、叩きつける…それを繰り返されてた日々は、
耐えきれなくなった母親の通報で終わった。
だけどそれを切っ掛けに母親は、重い病気を抱えた。
そんな、末路だった。
消えない痣、鳴り止まない過去の記憶の警報。危険を感じた時の瞬発力が、まだ俺の中に残っていて。
ゆらりと力抜けに歩み寄る父親の目。
ビールの瓶を振り上げる時の顔。
後ろで「やめて」と泣き喚く妹の声。