捕まっちゃって、奪われて。
壊されていた。壊されたんだ。
何もかも、子供の時の夢も希望も。
だから俺は今こんな風に生きてしまっているし、虐待のニュースが入る度、刑務所の前を通る度、怖くなって仕方ない。
人の手が、怖い。
怖がりで、弱虫で、それなのに強がり続けて大人になって。
忘れない、あの記憶は…。
今もまだ、鮮明に残っていて。
***
「……飯でも食いに行くか?」
「……え…」
「腹減っただろ。行こうぜ」
「……」
きゅうぅ、という音が車の中に響く。
「…っ!!」
カァッと顔を赤らめて、下を向いてしまう東雲柚鈴。
「…っぷ」
「…な!」
俺を見上げて、やっと初めて、目の焦点が合った。
「俺は、高原逞。よろしくな、ユズ!」
何かの始まりを告げた、サンタの夜。