捕まっちゃって、奪われて。
[side:Takuma]
「…はぁ……」
冷めたコーヒー缶のふちに、また薄っすらと雪が積もる。
それを落として、また缶の中身を見つめて。
それの繰り返しを、何度しただろう?
「……彩香ー」
呼んだって来ない。
そんなことは分かっている。
…分かっているけど。
「……もう、会いたいよ」
初めて抱いた時の感触も、
初めてキスした時の感覚も、
初めて笑い合った時の感情も、
全部、鮮明に覚えていた。
「……彩香…」
こんなに、愛してる。
言葉では言い表せないほど。
俺は人を愛すのが下手らしい。
22年間、今迄の彼女はみんな、
他に好きな人ができたか。
俺に愛を感じなかったか。
そんな感じで、離れて行った。