夜空にランプ
「また来てね」
「はい。ありがとうございました」
彼を振り切るようにお店を出た。
「待てって!…熊谷!」
右手首をまれ、離そうとブンブン振るが力には勝てない。
諦め腕を静かに下ろす。
「軽率なこと言った。ごめん。…このまま見過ごすこと、俺はしねーから。もっと、話してくれないか。無理には、聞かない」
顔は合わせず背を向けたまま、橙色の灯りに浮かぶ二人の影だけを見つめた。
「…ごめん」
やっと落ち着いた声を取り戻すと、彼も掴んでいた手をそっと離し、私はそれ以上話せないまま家へと帰って行った。