夜空にランプ
ある時、店の用があって遅れるという塚田君のため、先に一人でお見舞いに行くことがあった。
リンコさんの病室に行くと、いつものトレードマークの丸メガネをかけながら、穏やかに微笑んでいる姿があった。
手元には、塚田君に渡したアルバム。
「こんにちは、リンコさん」
「千鶴ちゃん。本当に毎日ありがとうね」
「いえ。それ、見てくれてたんですね」
「ふふふ。見てるとね、心がうずうずして、早く元気になって、作品作りしなきゃって思うの。お客様の喜ぶ顔も浮かぶのよ。それにね、千鶴ちゃんの気持ちもよーく、写真に込められてるのがわかるのよね。雑貨や棚、アトリエも。本当におしゃれに撮れてる。嬉しいわ。ありがとう」
「写真撮っててよかったです。大好きなお店で大好きな写真撮るの、すごく楽しいし、その上店主さんに喜んでもらえるなんて、この上ない幸せです。こちらこそありがとうございます」
「ふふ、やーね、かしこまっちゃって」
口に手をあて、上品に笑うリンコさん。