夜空にランプ
両手でガッツポーズをしてみせるリンコさん。
病室を出るとき、いつものお得意の意味深なウィンクも忘れなかった。
明日にはもう、彼もリンコさんもこの街を出ていく。
無常にも時間はただ過ぎるだけ。
もう何度目だろう。
意気地なしな自分に苛立つのは。
少し前は我慢していた、もっと話したい、もっと触れていたいって思う衝動が、今では嘘のように縮こまっている。
そんな私を知ってか知らずか、彼は突然ひらめいたように言い出した。
「最後のスペシャルナイトをしよう」と。
今夜は新月でも満月でもない、しいてゆうなら、満月の四日くらい前だろうか。
秘密基地の佇まいを見せた部屋は、今はもうどこを見渡しても影はなく、代わりに広々とした空間に、煌々と贅沢に優雅に月明かりだけが差し込む。