【BL】好きになっていいですか?




実は酒が苦手な俺だが、このワインは本当に美味しい。



ワインに舌鼓していると料理が運ばれてきた。


「俺、コース料理とか食ったことないけど。」
「楽にしてください。普通に食べればいいんですよ。」


言われるまま料理を一口。


「美味い……」
「口にあったようですね。好きなだけ食べてください。」



美味い料理とワイン。

当然手が進み、皿はすぐ空になった。


「本当に美味かった。」


そう朔弥に言うと、


「やっと笑ってくれましたね。」


と微笑まれた。


そうだ、忘れてた!
鍵取られてるんだった。
呑気に食事楽しんでる場合じゃなかった。


「その顔が見たかったんです。」
「え?」


朔弥は俺の家の鍵をテーブルに差し出す。



「困らせてしまってすみません。鍵はお返しします。」
「…ど、どうも」


鍵を受け取るが、どうにも納得いかない。


彼はボーイにカードを渡し、会計を済ませた。



「やっぱり俺も払うよ。」
「いいんですよ。僕がお誘いしたんですから。」
「なぁ…いくら一目惚れしたからって、ここまでするか?」
「そうですね。アナタは知らないから」
「?」
「さて、店を出ましょう。」


彼が席を立ったので俺も立ち上がる。


途端に視界が歪んだ。


倒れると思った身体は、温かな体温に支えられた。


「大丈夫ですか?」
「ああ、ごめん。酔ったみたいだ…普段飲まないから」
「お酒弱いんですね。しっかり掴まってください。」


俺は半ば彼に縋りつく形で店を出た。


その後の記憶が、俺にはない。


< 7 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop