【BL】好きになっていいですか?
実は酒が苦手な俺だが、このワインは本当に美味しい。
ワインに舌鼓していると料理が運ばれてきた。
「俺、コース料理とか食ったことないけど。」
「楽にしてください。普通に食べればいいんですよ。」
言われるまま料理を一口。
「美味い……」
「口にあったようですね。好きなだけ食べてください。」
美味い料理とワイン。
当然手が進み、皿はすぐ空になった。
「本当に美味かった。」
そう朔弥に言うと、
「やっと笑ってくれましたね。」
と微笑まれた。
そうだ、忘れてた!
鍵取られてるんだった。
呑気に食事楽しんでる場合じゃなかった。
「その顔が見たかったんです。」
「え?」
朔弥は俺の家の鍵をテーブルに差し出す。
「困らせてしまってすみません。鍵はお返しします。」
「…ど、どうも」
鍵を受け取るが、どうにも納得いかない。
彼はボーイにカードを渡し、会計を済ませた。
「やっぱり俺も払うよ。」
「いいんですよ。僕がお誘いしたんですから。」
「なぁ…いくら一目惚れしたからって、ここまでするか?」
「そうですね。アナタは知らないから」
「?」
「さて、店を出ましょう。」
彼が席を立ったので俺も立ち上がる。
途端に視界が歪んだ。
倒れると思った身体は、温かな体温に支えられた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、ごめん。酔ったみたいだ…普段飲まないから」
「お酒弱いんですね。しっかり掴まってください。」
俺は半ば彼に縋りつく形で店を出た。
その後の記憶が、俺にはない。