たぶん恋、きっと愛
「……だって、まだ子供じゃないですか」
昌也の声が、震える。
「だから恐怖ばっかり強烈に刷り込まれたんだろうよ」
低く答える凱司に、鷹野は雅を抱え直し、ぽつりと口を開いた。
「多分、赤い髪ひとりじゃ…なかった。二人は確定」
「……え?」
昌也の表情が、歪む。
凱司は天井を仰いだまま目を瞑り、そのまま黙り込んだ鷹野を問い質そうとはしなかった。
いつの間にか雷は遠退き、雨は名残程度に、静かになった。
黙ってテーブルを片付け始めた凱司は、ゆっくり口を開いた。
「…だからどう、って訳じゃねぇんだ」
捜し出して潰した所で何にも戻りゃしねぇし、憐れんだって取返しなんかつかねぇ。
「…忘れてやってくれるのが、多分一番、いい」
一緒にテーブルを片付ける昌也をまっすぐに見て、僅かに、目を眇めた。
「こんなに厄介なガキだとは思わなかったが……しばらく連れて歩くだろうから…よろしく頼む」
珍しく、頭を下げたように見えた。
いや、見えただけで、視線を落としただけかも知れないが、昌也には、充分意外だった。
「今更…訊くのもどうかとは思うんだけど……」
あの子はいつまで預かってるんですか?
「……あ?」
「だから、いつまで預かってるのかって…夏休み間ですか?」
「あー…差し当たって高校おわるまで?」
言い難そうに語尾に疑問符を付けた凱司に、昌也は動きを止めた。
「それは…もう、同棲……ですよね」