たぶん恋、きっと愛
「たまには、ご飯なんか作んなくていいのにな」
帰宅したら、雅は居なかった。
鷹野は、手にしたメモを呆れたようにヒラヒラさせながら、苦笑した。
凱司の機嫌が、明らかに悪いのが、可笑しくてたまらない。
「…まだ、帰宅予定時刻まで35分もあるよ?」
「……見りゃわかる」
よほど落ち着かないのか、灰皿を山にして尚、煙草をくわえた凱司に、必死に笑いを堪えた。
「あんた…まさか、雅ちゃんが職務怠慢してるとか言わないよな?」
「あ? あぁ…そういや……そうだな」
雇用関係を持ち出したのは凱司であるのに、すっかり忘れていたのか、凱司はふと笑うと、煙草を押し消した。
「何してんだろな、俺」
くくく、と笑う凱司は。
鷹野の手から雅のメモを抜き取った。
「ったく、携帯持たせなきゃ駄目だな。この番号誰のだよ」
記された番号は、番号だけで、名前はない。
一緒にいる友人のものだろうが、男か女かも解らない。
「どうせなら駅で拾って飲み行こうぜ」
凱司は携帯を開いて、すぐ閉じた。
「………鷹野、かけろ」
「…別に…いいけど」
どうにも今日の凱司は可愛い気がして。
鷹野は笑いを堪えながら、固定電話の受話器を、取った。