たぶん恋、きっと愛
「すごく似合うのに」
首の後ろに手をやり、外そうとしているのか、雅は慌てているように見えた。
「だって…貰えないです! あたし、お金貯めるから!そしたら……そしたら……」
真っ赤な顔をしているのに、表情は悲しそうで。
何かまた、ややこしい事を考えてるんだろうな、と、鷹野は苦笑した。
「どうやってお金稼ぐの」
「……………」
夏休みも、もう終わる。
学校が始まれば、家事との両立で手一杯なはずだ。
そこに無理にバイトを突っ込む事は、無謀に思えた。
「…あたし、今の手持ちがなくなったら…消しゴム一個買えない感じ…ですよね」
「今んとこ、そんな感じじゃない?」
きゅ、と眉根を寄せて思案する雅の手から、ようやく外れた細い金属を取り上げ、鷹野は再び雅の首を引き寄せる。
何かを思案しているときの雅ほど、無防備で、鈍い生き物は居ない、と鷹野は可笑しそうに微笑んだ。