たぶん恋、きっと愛
ライブハウスでも、スタジオでもない。
ただの使われていない倉庫の、壁。
そこに、ひとつのバスケットリングが揺れている。
その真下に、赤いエレキギターを抱えた金髪の男が、いた。
ぼんやりと煙草をふかす、その男の、髪に。
高価そうだ、と。
思わず足を、止めた。
丁寧に脱色してから、きちんと“金色”に染め上げれば、ああいう高そうな色になるのかも知れない。
ブロンド、というにはやや濃厚な色合いの髪が、初夏の暮れなずんだ光を、なめらかに反射していた。
弦を見ずに爪弾いているだけの音。
なんの曲も成してはいなかったけれど。
ただその手が、大きくて。
その指が綺麗、だった。