たぶん恋、きっと愛
「………」
「………」
宇田川の居なくなったリビングで、凱司はコーヒーを、雅は紅茶を飲みながら、どちらも口を開かなかった。
宇田川の来る前には流れて消える気配を見せていた、気恥ずかしいような緊迫感はすっかり元に戻り、張り詰めていた。
凱司は煙草に手を伸ばし小さく息をつく。
「雅、英作文。終わらすぞ」
「あっ…はい」
今、持ってきます、と立ち上がった雅と目が合えば、ぎこちない笑顔が、痛々しい。
やりすぎた、かも知れない。
と内心頭を抱え、凱司は火をつけないままの煙草を、指先でくるりと回した。
途中までは単純に、乱暴にしてやれば身の危険を自覚するだろう、という思いだった。
何をされても平気、などという捨て鉢な自己暗示は、いざとなったら崩れ去ることを自覚させない事には、守りきれないと思ったから。
ただそれだけだったのに。
泣く雅を見て。
可哀想になった。
愛しく、なった。