たぶん恋、きっと愛
鷹野は、帰って来なかった。
いつもの時間をとうに過ぎて、連絡もない。
「…まだ、かな」
顔に、はっきりと不安を浮かべ、10分ほど前から凱司の傍を離れなくなった雅が、ついに凱司のシャツをつまんだ。
「大丈夫だ。そんな顔すんな」
「……ほんと?」
「ああ。おおかた、飛び込みの客でも来たんだろ」
言いながらも凱司は。
今日に限ってそんな客、あいつは受けねぇよな、と時計を見やった。
いつもよりも、2時間過ぎている。
「おい」
テーブルに乗ったノートの隙間に挟まったプリントを眺め、凱司は一ヶ所を差した。
「新聞スクラップってなんだ」
指にしたプラチナのリングが、“世界史:新聞スクラップ”と書かれたそばで、カチカチと音を立てる。
「……み…見てません!凱司さんは見てません!……ね?」
一瞬の間の後、引ったくるようにプリントを手元に引き寄せた雅が、甘えるように凱司を覗き込んだ。
「…てめぇ……宿題くらいはマトモにやれと…」
言っただろうが!
と、怒鳴りかけ、凱司は急に疲れたように大きく。
息を、吐き出した。