たぶん恋、きっと愛



「なに泣きそうな顔してんだよ。違うのか?」


ゆっくり離れたガイの髪から雫が落ちるのを、茫然と見つめた。

唇に、体温が残る。



「…まぁ…違っててもいいじゃねぇか、宿代だと思っとけ」

冷たい唇しやがって。
俺まで風邪引いたらどうすんだ。


悪びれる様子も慈しむ様子も全くなく、まるで何事もなかったかのように、ガイは。


やっぱガキだったか、と、ひとりごちて。


ハンドルを握った。




雨はますます強くフロントガラスを覆っている。

この道より先には、行ったことがない。

見えない前方、見えない景色。
走り出した車の中で、雅は取り乱したまま、だがおとなしく。


左腕の刺青を、泣きたいような気持ちで見つめながら。



ただ、座っていた。




 
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