たぶん恋、きっと愛
「…悪い人って、みんなこんな家に住んでるんですか?」
ガラスのドアは閉められて。
続いていた階段を登りながら、雅は。
先に立つガイの濡れて重そうな、踵の減ったリングブーツをみつめていた。
「物件収入で生きてんだ。いっつもあんなモン売ってる訳じゃねぇ」
悪人ではない、とでも言いたかったのか、ガイは振り向かずに、そう言う。
先を上るガイが、ウォレットチェーンに繋がった鍵を、ポケットに突っ込むのを見ながら。
不意に、ほんのり香ってきたコーヒーの匂いに、何故だか急に、緊張が増した。