たぶん恋、きっと愛
「凱司さん、雅さんのおばあ様のお宅に行って頂けますか」
「……おぅ」
数日ぶりに現れた宇田川は、不備でもあったのか、一枚の紙を取り上げた。
「登録印が必要でした」
「……ん、わかった」
凱司は、何かの見積書を見比べながら生返事をしたが、ふと顔を上げて、いつ来た、とひきつった笑顔を見せた。
「住所はこちらですが、雅さんを連れて行かれれば、真っ直ぐ着くかと」
「あ? どこに」
「…鎌倉の、雅さんのおばあ様のお宅です」
「…なんで」
「……もう…結構です。私がお連れします」
ふう、とため息をついた宇田川は、肩をすくめ、さっさと雅の部屋へ向かった。
「なんだよ宇田川、もう一度説明しやがれ!」
もう結構です、と年甲斐もなく拗ねたような声が、廊下の向こうで聞こえた。