たぶん恋、きっと愛
昨夜に用意した白い米を、丸くて平たいお握りにする。
ふつふつと沸騰を始めたガラス製の鍋を、火から下ろした。
「………疲れた」
雅は、お握りを冷たい焼き網に乗せたまま手を洗い流し、少し朝の空気を吸おうと、ベランダへ出る窓を開けた。
匂いを、感じる錯覚が消えるかも知れない。
ヒヨドリが、近所の庭木に、じっと止まっている。
雅は、木の種類も知っていた。百日紅。サルスベリ。
濃いピンクの蕾は、今にも開きそうで、まだ咲かない。
咲けば、きっと綺麗だろう。
固そうな幹から、レースのような柔らかい花が、溢れるように。
大きく枝を拡げているから、桜にも負けないかも知れない。
「……具合、悪い」
雅は、ずるずるとその場にへたりこむと、上がりきった鼓動と、冷たく震える指先に、眉をひそめた。