たぶん恋、きっと愛


ひとりで居たらいけない、と全身が叫ぶけれど、雅の体は動かなかった。

こんな朝早くに、すがっていい人などいない。



「……大丈夫っ…!!」


気合いを入れるように呟いても、泣き腫らした目は重く頭を締め付けた。



「…頭…痛い」


なんでこんなに泣いたんだっけ?
いつ、泣いたんだっけ?


「なんで…こんな辛いの…」

大丈夫なのに。
あたしは、大丈夫なのに。


大丈夫。
平気。
関係ない。

好きなんかじゃ、ない。


凱司さんも。
鷹野さんも。

好きだけど。
好きなんかじゃ、ない。


ただ、少し。
甘えていただけ。

あたしは、好きになんかなっちゃいけないんだから。




震える指先を、ぎゅっと握り、雅は明るくなった空を見上げた。


「…大丈夫」


それでも雅は、ひどく疲れたようにベランダの壁に寄りかかったまま、呪文のように、小声でそう、繰り返した。
 

< 401 / 843 >

この作品をシェア

pagetop