たぶん恋、きっと愛



なかなか頭を上げない雅に手を掛けようとして、やめた。


肩が、震えている。


友典は困ったように膝を付くと、下から顔を覗き込んだ。



「……雅さん」


ぎゅ、と閉じられた目から、涙が落ちた。


「………」

立ち上がりざまに雅の肩を支え、頭を上げさせる。


ひとまず教室から出そうと、背に手を当て誘導するが、相当に緊張しているのか、動こうとしない。



「雅さん…泣かないで下さい」


雅の頬を伝った涙を、親指で拭ってしまってから、友典は背後の視線が、恐ろしいほどに息を呑んだのを感じた。



「……宇田川が」

ポツリと小さく呟かれた声を皮切りに、ざわざわとした空気が教室内を、流れる。



「どの人…を、踏んだり…したんですか」


いっぱいいっぱいなのか、友典の手が頬に添えられたままの雅は、唇を震わせ、頬に当たるクロムハーツのリングに触れた。

きゅ、と目をつむり、リングを指先でなぞった雅は、ゆっくりと、しゃくりあげた。
 


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