たぶん恋、きっと愛
「じゃあ…誰も怪我してない?」
事の顛末を、ようやく聞いた。
教室から離れた、昨日の廊下の突き当たりで。
「…すみません、父に…言っておけば凱司さんには…伝わったでしょうに」
唇に指を当て、思案する雅を静かに見つめ、友典は俯いた。
「…解りました。友典さんに確認を取る前に思い詰めたのが駄目でしたね…」
急に話し出した雅が、吹っ切れたように真っ直ぐ顔を上げた。
「あの…。友典さんは、噂に逆らわずにいること、嫌でしょうか?」
「………は」
テリア犬を型どったキーホルダー型の時計をちらりと見、雅は、ああ、妊娠はしなくていいんです、と続けた。
「あたしなんかじゃ、友典さんに申し訳ないんですが…」
「…噂に逆らわず、ですか?」
意を読み取れずに眉をひそめた友典に、雅は甘いとは言い難い、思い詰めた目で、だって、と呟く。
「事実を説明したって、友典さんがあたしを守るとか、納得できないし、でも在学中はきっとお世話になるんだと思うし」
波風、立たない方がいい気がするから。
「噂どおり、付き合ってることにしてしまえば、下手に否定するより、丸く収まります」