たぶん恋、きっと愛


「…触ってないのに」

「触り損ねた、の間違いだ」

「…だって好きなんだも…」

「黙れ」



膝の間から抜け出そうともしない雅と、腰を抱えたまま離さない凱司とを、奇妙な気持ちで眺めた。


この2日で、こういった表情をする雅を見たのは、最初にチェリーパイをねだった時だけだ。



「………セクハラ癖が?」

つい出てしまった声に、友典は口をつぐんで目を逸らした。

凱司の膝の間で、雅の動きが止まる。



「セクハラ……でしょうか」

「……………」


凱司が頷く。

宇田川も、苦笑を浮かべ、遠慮がちに頷く。



「……宇田川さんの髭と凱司さんの蛇と鷹野さんの腰は…免除してください!」


「おまっ…腰ってなんだ!!」


「蝶の人魚がいるんです!すべすべなんです!」


だんだんと声が大きくなる雅を唖然と見つめるしかない友典は、やっぱり楽しそうな凱司と、幼い表情の雅とを見比べ、隣に立つ父親に視線をやった。



「友典、間違っても間違えてはいけませんよ。雅さんのコレは治りません」


半ば呆れたような、諦めたような、それでいて少し嬉しそうな笑みを浮かべる父親を、理解は出来なかった。
 



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