たぶん恋、きっと愛
鷹野が戻るまで、まだ時がある。
雅の淹れたコーヒーは冷め、小さな陶器の灰皿は、いつの間にかいっぱいになっていた。
雅が誰かに恋をする。
構わない、じゃないか?
最初から、そうなったら手放してやろうと思っていたのだから。
俺じゃなければ鷹野で、鷹野じゃなければ俺だ。
と、思ってはいる。
どうしてそう思ったのかは、思い出せないが、多分、今のところ、間違えてはいない。
今のところは。
だがいずれ。
俺じゃなく、鷹野じゃなく。
友典ですらない、誰かだったら、平静でいられるだろうか。
平静を、装えるだろうか。
「雅」
溢れそうな灰皿の上に、更に灰を落とした。
「やだ、凱司さん吸いすぎです」
片付けろとでも言われると思ったのか、呼ばれたままに近寄ってきた雅は、山になった灰皿の中身を寄せると、指に挟んだそれも早く消せとばかりに、凱司の目を、覗き込んだ。