たぶん恋、きっと愛
「あの…あたし、もう少しここにいます」
「え?打ち上げ来ないの?」
全ての出演が終わり、外に出れば、既に日は落ち、薄暗い。
雅と一緒に観ていた先輩は、2学年上。
「さっきの…バンドの人、を…待ってたい…から」
「…さっきのって、最後の?」
うん、と曖昧に頷いた雅の顔色が冴えない気がして、彼は他の友人を振り返った。
「先、行ってて~。忘れもんした。雅連れて後から行くから場所決まったらメールちょーだい」
はしゃいでいる同級生たちは、雅と彼を見、先輩早く来てくださいよ、とニヤニヤ笑った。
「あ~、あいつら勘違いしてるなあ…」
ポリポリと頬を掻きながら、照れ臭そうにしている彼を見上げて、雅は困っていた。
十中八九、このままここに立っていたら、鷹野か凱司かが声をかけてくるだろう。
待っているように言われたのを、素直に待ってしまった。
自分は多分、先に行った友達と打ち上げすることは出来ない。
絶対に機嫌を悪くした凱司と。
目だけで‘そこを動くな’と笑った鷹野に逆らうなど、できやしない。
あたし、どうしたんだろう。
何もなかった事にして、帰れば良かったのに。
こんな近所だから会ってしまったけれど。
今後、付近に近づかなければ。
接点のない人達なのだから、もう会うこともないだろうに。