たぶん恋、きっと愛
背を押されるまま、今しがた出てきたばかりのライブハウス。
片付けの始まっている中を通過してドアから押し込まれると、鷹野を交えたメンバーが一斉にこちらを見た。
「知り合いのガキ。今日預かってんだ。名前は雅」
凱司がそう言うので、雅は無意識に頭を下げる。
手招きしている鷹野におとなしく近づき、一緒にいた彼は?と聞かれてようやく、我に返った。
「…ああ…っ…先輩にあんな言い方…っ……痴女みたいで学校行けなくなっ……」
「馬鹿は黙っとけ。日本語おかしい」
「だって!!……彼氏なわけ…!…ない、のに……」
そのまま鷹野の前にぺたりとへたりこんだ雅の声が、だんだん小さくなる。
「なにこの子、可愛い」
今にも吹き出しそうな声で言った、ベーシスト。
「ごめん、俺が迎えに行けば良かったね」
目の前でへたりこんでいる雅の頭を撫で、鷹野が苦笑する。
「凱司さん…また大人気ないこと…したんですか?」
ボーカルが、自分の赤い髪を束ねながら眉をひそめた。
煙草に火をつけ、雅の腕を引き上げて立たせてから。
凱司はまず、ボーカルを指差した。
「一度で覚えろ。アレが昌也。こっちの前髪長いのが昌也の弟、佑二」
よろしく、と首を傾げた二人に。
雅はとりあえず慌てて、頭を下げた。