たぶん恋、きっと愛
淡く、盲信
「ああ? 殴られた?」
帰宅した雅は、シャワー中の凱司に、ドア越しに話し掛けていた。
「怪我ないんだろ?」
磨りガラスのドアに、凱司の模様が透けている。
鷹野はと言えば、さっき弾いた一部分を教えて欲しいと言われ、打ち上げのカラオケに連れていかれてしまった。
「…あたし、間違えちゃったのかなあ」
小さく呟いた声は聞こえなかったのか、シャワーの音が止まっても、返事は無かった。
「雅。そこのタオル寄越すか、あっち行くか、しろ」
「ん…」
焦げ茶色のバスタオルを手に取った雅は、ぼんやりとドアを開け、差し入れる。
「……馬鹿ガキ」
呟かれた凱司の声も耳に入らないのか、雅はタオルが受け取られると、再び座り込んだ。