たぶん恋、きっと愛
ほんのり赤い顔をした雅。
行って来ます、と逃げるようにリビングを走り抜けてから。
ゆっくり出てきた凱司が、鷹野にルージュを手渡し、コーヒーカップに口をつけ、そこに残ったピンク色を思わず凝視するまでの間。
リビングは無言のままだった。
「…俺、我慢したのに」
ぽつりと呟いた鷹野に、カップについた口紅を親指で拭き取った。
「…佑二呼ばなきゃ良かった」
今から断るかなあ、とぼやくように言う鷹野に、宇田川は困ったように眉を下げた。
「いえ、是非呼んでください」
友典が思い詰めます、と項垂れた宇田川が、頭を抱えるようにして小さく言った。
「友典は気付いてないのか?」
「多分、まだかと」
雅は15。
友典は17。
同じ学校に通う、義理の恋人同士。
宇田川は、あれだけ手のかかる娘だ、と1人思う。
守りたくなる気持ちが恋心に発展するのも、不思議はない。
時間の問題だ。
彼らと、同じように。