たぶん恋、きっと愛
友典と“泣かす”の繋がりを見い出せないまま、黙り込んだ雅から上級生が離れた頃。
柳井のクラスが一斉に戻って来た。
ライブで見掛けた気がする誰かが雅を見つめ、ああ、と目を合わせた。
「一昨日、居たよね。柳井ともめてた」
「あ…すみません、その柳井先輩を待ってるんですが…」
すぐ来るよ、ほら。
と指差された方を見れば、明らかに雅を睨み、不機嫌そうな、彼が来るところだった。
「…え、…大丈夫なのかよ、あの顔」
クラスメイトが引いた声を上げながら雅と柳井とを見比べ、そそくさと離れて行った。
「……なんか、用」
眉間にしわを寄せたまま、正面に立った柳井は。
怪我…しなかったかと思って、と呟いた雅に、呆れたように小さく息を吐き出すと、雅の腕を掴んだ。
「ちょっと、こっち」
もと来た廊下を、雅を掴んだまま足早に行く柳井の苛ついた顔に、誰も声をかけない。
引きずられるように連れられる雅は、早くも泣き出しそうな顔で俯いて。
離してくれとも言えないまま、まだ誰もいない図書室に、連れ込まれた。
怖い。
掴まれた箇所から、鳥肌が立つような恐怖が、じわじわと雅の気力を、奪う。