たぶん恋、きっと愛



閉められたドアに鍵はない。

だが雅には充分に、外から遮断されたような閉塞感があった。




「…雅、聞いていいかな」


少し落ち着いたのか、柳井は掴んでいた手を離した。

一歩、二歩と後退った雅が、机で行き止まる。




「雅の…彼氏は、誰だ?」

「………友、典さん…です」



答えることに、苦痛を感じる。

いない、と言いたい。
誰も彼氏ではない。

そう、言いたい。




「いつから?」

「………先週」


ごめんなさい、ごめんなさい。
名前を出すことが、こんなに後ろめたいなんて。



「…金髪と、ギタリストは?」

「…………」



答えられない。

好きだけど、決して彼氏ではない。

好きだけど、そんなこと、他に言えない。

二人を好きだなんて、言えない。




「…宇田川を、ほんとに好きなのか!?」


雅は、緊張に耐えられそうもなかった。

噛んだ唇と、その上に当てた握り締めた指とが、白い。


揺れる目は、柳井を見ることが出来ずに、床の継ぎ目だけを映していた。




じわりと。
呼吸が、早くなる。
 



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