たぶん恋、きっと愛
最初の時のように。
逃げて逃げて捕まって。
万が一、泣きでもしてしまったら。
犯された事に、なってしまう。
「……でも!どうして…!?」
「…お願い、します」
雅は僅かに唇を噛み、深々と頭を下げる。
短くなった髪がバラバラと、頬にかかった。
どうせ逃げられやしないなら、と。
お前が好きだ、と。そう言ってくれた凱司の顔を。
投げ出してくれるな、と言った、灰青の目と、薄墨の蛇を思い出したけれど。
チカチカと被さるようによぎった、息吹を頼む、と凱司に言った鷹野の顔。
万が一、息吹に犯されたら、と泣き出しそうな不安定な声で自分を抱き締めた、その体温の記憶に。
あの時、“犯されない”手段として、自らの意志で、息吹の手を取ったわけだから。