たぶん恋、きっと愛
「…つらく、ないです。もう大丈夫」
俯かないと決めたのか、雅は真っ直ぐに由紀を見つめた。
そろそろ深夜になろうかという時間。
由紀の運転する車は、雅の知らないブラッセリーの駐車場に止められた。
目の前に置かれた、クリーミーなオレンジジュースは、薄皮ごとミキサーにかけられたのか、とろりと艶やかに泡立っている。
「……しなくてもいい思いを…させてしまいましたね…」
髪を、切られるなんて。
よく知りもしない男に、身を差し出すなんて。
「友典に……必ず付いているよう言えば良かったかも知れませんね…」
あの子に、雅さんと距離を置くように言ったのは私です、と。
うなだれた由紀を、雅は何か、不思議なものを見るように見つめると、横に首を振った。
「……いいんです。そうしたかっただけですから」
毛先をゆっくり手に掬い、何も言わなかった凱司にも、さっきそう、伝えた。
うまく、笑えはしなかったけれども。
小刻みに震えていた指は、由紀の手にさすられ、夢見るように、落ち着きを取り戻していた。