切端詩集 断片的な虚構
足の下の蛇
『足の下の蛇』
細胞の中で眠っているオーガズムが
白昼夢のようにゆっくりと目を覚ます
それは何がキッカケなのかは知らない
ただ、無性生殖のような
オートマチックで自発的なそれは
なにか足りないということが
ぜんぶ幻だと教えてくれる
狂ってるということは、まともなことだ
指一本動かさずに
僕は高みへと噴き上げられる
止まらない痙攣
小さな部屋で声を殺していると
自分が笑えてくる…
何を守っているのかって
ああ、守っているさ
誰にも邪魔はさせない
この破壊は祝福の証
開ききって泣く時に
失ったものから解放されていく
ゆっくりと無理なく密やかに
初恋のような心臓の痛み
絶対の静寂と対になって踊るナタラジ
僕の身体はその足の下で喘ぐ小さな蛇だ
押しつぶされて体液をにじませながら
至福に悶えて身をよじる
ああ、これを全部くれるんだ
一滴たりとも惜しむことなく