切端詩集 断片的な虚構
刺客
『刺客』
暴言と匕首で人を斬り
いまこの岸辺で座っている
不意にかの暗殺者のことを思った
闇愚な王のために命を落とす己を
壮士と言えたあなたを
少しだけ羨望した
それはいつだって無様で醜い
裏切ることに慣れはない
狂犬を飼い慣らす主は
その管理に放し飼いを選ぶ
逆流する血を衝動に変えて
それを誰が望むのかと訊く
答えはない
暗闇の一部である右手に
そっとくちづけた
その苦さが舌に残る