八重桜の木の下で
「先生覚えてる?このクラスで初めて遠足行った時のこと。」

「なんかあったっけ?」

「『せんせー箸忘れたー』って、ちー坊が言いに行ったらさあ。
自分の箸を1本だけ渡して、『はい、これで頑張って!先生も頑張る!』」

「ぶっ」

「二人が箸1本で弁当喰おうと格闘してるの見て、みんな大爆笑だった
よな!俺とは喋るくせに学校では大人しかったちー坊が、みんなに面
白いヤツって思われるようになったのも、あれがきっかけだったんだ。」

「あっはっは!あいつらしいなあ!」

「あいつって誰?小崎先生のことじゃんか」

「そーだよなぁ、あっはっは!」

「遠足といえば、毎回しおりに書いてあったよな。
『バナナはおやつに含まない!』って。あれ嬉しかったなー。」

「オレ、未だによくわかってないんだけど。とりあえず『含まない』って
書いてあったら、サッカーボールとか持ってっていいんだよな?」

「おう。『バナナはおやつに含まない』ってことは、好きなだけバナナを
持って来いってことだろ?その『バナナ』が『おもちゃ』の暗号なんだよ。」

「あ、それ、おれたち・・・私たちが小学生の頃に作った合言葉なんだ。
先生に内緒で遊び道具を持ってくためにな。小学校の先生になったら
絶対に流行らすって、言ってたな。ほんとあいつも変わってねーなあ。
…じゃ、そろそろ遊ぶか!みなの衆~!思いっきり遊べ!」

「わーい!」
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