あたしが見た世界Ⅲ【完】
「アイ」
ふと、低い声で名前を呼ばれ、あたしの思考は雲散となってしまった。
「……はい…」
「情を移すなよ。万が一の時に殺せなくなるぞ」
それはまるで、いや、確実に、あたしが夜一を殺すということを前提に言った。
しかし、彼の目には、まだ迷いが渦巻いているような気がした。
「…はい……」
あたしは返事をすると、母さんの方をチラリと見た。
母さんは瞼を閉じていて、コクンこくん、と頷いていた。
……………………。
……………。
……。
寝てんのかよ。