あたしが見た世界Ⅲ【完】
16. 修行
「さてと!」
手をパンと叩いて父さんが立ち上がった。
「今日からまた忙しくなんぞー」
「え、何で?」
リュウ兄がキョトンとした顔をして、父さんを見た。
「え、何でって修行に決まってんだろ」
「えェ――…また修行すんのかよー」
げんなりした表情をしてリュウ兄が項垂れた。
「またってお前は修行なんかしてねぇだろ」
「え、あ、イヤ、したってば」
リュウ兄が目を泳がす。
「ほう。いつ?」
父さんが問い詰める。
「えぇっと、いつだったかなー…?」
「いつなんかなー?」
父さんは笑顔で言っているものの、その顔が怖い。
「あ、思い出した!」
リュウ兄が「閃いた!」みたいな表情を浮かべた。