Repeat
彼女はテレビのリモコンのボタンを押す手を止める。

「あたしが悪いんじゃない。」

菜奇は目を灸から背けながら、苛立ち混じりにいつもより低い声で愚痴り始める。

「要はテストの赤点、とっちまったんだろ?でも、先生もクリスマス前に補修、終わらせてくれるんだからありがたいと思いなよ。」

灸が言うことは全て、菜奇にとっては図星で、何も言い返せなくなり、菜奇は黙りこくった。
灸はそれ以上彼女に応答を求めなかった。

「ねぇ…お母さんとお父さん、最近、仲悪いよね。」

「その話をするな。胸糞悪ィ。」

沈黙を破ったその一言で、灸の態度は急変し、また沈黙へと変わる。
ここ最近、両親の仲に亀裂が生じていた。原因は、特にないが、しいて言えば夫婦間のすれ違いだろう。
無論、二人もそれが原因だと気づいていた。
止めようとか仲裁に入ろうとか、しようと思えば出来た。だけど、学校や習い事が度重なりそれどころじゃなかった。それが原因で菜奇は何事も手につかない。
テストで赤点を取ってしまったのも、それが原因と言っても過言ではないだろう。
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