天邪鬼なアタシと爽やか王子
早くなる鼓動を隠しきれない。
なんだあの笑顔……反則だ!
先輩が出て行ったドアをチラチラ見てしまう。
「あら、直ちゃんも天馬先輩にノックアウトされた?」
「な、なわけないじゃん!!」
焦りで声が上擦った。
マミちゃんはニヤニヤと私の顔を見つめた。口元がその猫のキャラクターぐらい緩んでいる。
「まぁ珍しいことじゃないよ。部活も天馬ファンよく来るから」
私はアイドルに溺愛するような人たちと同列になってしまったのか。
早くも恋に落ちてしまったことに後悔した。
「天馬先輩紹介してほしい?」
「して…くれるっていうなら…してくれてもいいよ…?」
こういう時、喜んでお願いしますって言えない自分が嫌いだ。
マミちゃんはそういう私を分かっているから、あー直は素直じゃないねぇと呟いて笑った。
そして始業を告げるチャイムが鳴った。