野獣の誘惑
さて、この状況をどう打開するか。
「……友達、待っているだけなんで」
「んじゃあ、その友達も一緒にどう?」
目の前に立ち塞がる男達は中々しつこいようだ。
気付かれないように俺は小さく舌打ちをする。
これは非常に厄介。面倒なことに巻き込まれてしまったものだ。
「これから学校に行くところなんで。結構です」
「そんなのサボればいいじゃん!」
(いやいやいや! 学校行くって言ったんだぞ!? 結構ですってキッパリ断っただろ!?)
こいつら、しつこいどころじゃない。もはや粘着だ。
苛立ちを押さえつつ、冷静さを装う俺を褒め称えていただきたい。
しかし、男達はそんな俺の怒りを察することなく、黙り出した俺に迫りよる。
後数センチで男の手が俺の肩に触れる──。
「お待たせー!」
その声に気をとられたようで、そこで男の手の動きは止まり、俺の肩に触れることはなくなった。
こう、なんで俺はツいていないんだ!
新たな問題の出現に、俺は頭を抱えたくなった。
大きく手を降りながら駆け寄ってくる美少女──遠藤柚(えんどうゆず)の姿に。