一歩
「ねぇ、柊君って今彼女いるの?」
リーダーっぽい女の言葉に周りの女たちも黙って私の回答を待っていた。
“柊”という言葉に聞き覚えがあるなと思いながらも、思い出せなかったから、
「知らない」
とだけ言って私は女たちの間をぬって、出た。
ううん、正確には出ようとした、かもしれない。
だけど、出られなかったのは女が私の腕を掴んだから。
「ちょっと、どういうこと?」
「自分だけ優越な立場に立って、うちらには何も教えないつもり?」
「せこっ」
どうやら私の回答が気に入らなかったらしい女たちはヒステリックな声で私に罵声を浴びせる。