一歩
「じゃあな~杏里ちゃ~ん」
「まったね~」
それぞれが教室に戻って行く中、優輝だけは教室へは入らず、私の方へ歩いてきた。
「ごめんな? 俺らのせい…なんだろ?」
ほぼ確信にも近い口調で優輝はそう言った。
いつもの優しい口調とはまたちょっと違った悲しげな声に、なぜか胸がキリキリと痛んだ。
「ううん、大丈夫だから…」
私はそう言って笑った。
「…なんか、悠莉が杏里を友達にしたがった理由がわかった気がする」
「……え?」
「なんでもねぇ」
聞こえていたけど、意味がわからなくてもう一度聞いたのに、優輝はもうそれ以上は何も言わなかった。
ただ教室に戻る間際「きちんと右腕冷やしとけ」って声が聞こえた。
……気付いてたんだ…、私が右腕ぶつけたの―――――…。