一歩



―――――…


「ねぇねぇ、何中出身~?」


担任に連れられ、教室に来てから数分もしないうちに、周りはガヤガヤとしはじめる。


友達を作ろうと必死になる子。
周りを見て、友達に愛想笑いする子。

そして、私みたいに興味もなく窓の外を見つめる子……は、一人もいない。




出席番号が一番最後の私は窓際の一番後ろの席になった。
“特等席”だ。

ここなら、目立つこともなく、誰にも話しかけられることはないだろう。



そう思い、大きなため息を吐き出す。



「あたし、悠莉」


早く、担任が戻って来ないものかと、教室の入り口を睨む私の右側から聞こえて来た声。


< 5 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop