一歩
―――――…
「ねぇねぇ、何中出身~?」
担任に連れられ、教室に来てから数分もしないうちに、周りはガヤガヤとしはじめる。
友達を作ろうと必死になる子。
周りを見て、友達に愛想笑いする子。
そして、私みたいに興味もなく窓の外を見つめる子……は、一人もいない。
出席番号が一番最後の私は窓際の一番後ろの席になった。
“特等席”だ。
ここなら、目立つこともなく、誰にも話しかけられることはないだろう。
そう思い、大きなため息を吐き出す。
「あたし、悠莉」
早く、担任が戻って来ないものかと、教室の入り口を睨む私の右側から聞こえて来た声。