一歩
「……杏里ちゃん…」
ハッとして、顔を上げると、そこにはコウタくんがいた。
……油断した…。
心の底から後悔した。
なんでさっき会ったのに警戒しなかったんだろ。
なんでもっと裏道から帰らなかったんだろうって思った。
街頭の下、私の顔はきっともう見られた。
私は、逃げるのも諦めてコウタくんを見つめた。
まぁ、尤も?
この靴じゃ早く走れないのだけれど。
「……」
「……」
「……」
「……」
お互い何も話さない、冷戦状態が続いた。