一歩
ひどく、居心地が悪かった。
だから、
「何か用?」って言おうと思って息を吸い込んだ。
「…な、」
「…なんで?」
「……え?」
「何か用?」の「な」まで言いかけた所で私の言葉はコウタ君の言葉にかき消された。
コウタくんの酷く低いその声に背筋がゾッとした。
多分、夜風のせいだけじゃない。
その声と、その表情に体が危険を知らせる…。
整った顔のコウタくんの顔には、眉間の皺が寄せられ、口も酷く歪んでいた。
「……何が?」
だけど弱気になっちゃいけないと思って、私もなるべく低い声で返した。