一歩
「こんな時間にこんな場所で何してんだって聞いてんだよ!!」
いつものような優しい口調でもなく、
優しい声でもなく、
優しい顔でもないコウタ君に私は恐怖心を抱いた。
コウタ君は歪んだ顔のまま私の方へツカツカと歩いてくる。
そしてばっと、私の腕を掴むと、私の長い髪の毛を上に持ち上げた。
「…いやっ」
「…なんだよ、これ……」
長い髪で隠された私の首下が露になり、コウタ君は困惑の声を出す。
今日、相手した男たちにされた無数のキスマーク…。
なんとか腕を自由にしたくて抵抗するけれど、男の力には敵わなかった。
コウタ君はじっと、私の体を観察しているようだった。
「…離してッ!!」
胸元まで開いたワンピースのせいで、胸にまでキスマークがついているのを見られるのが嫌で私は思いっきり腕を振った。