一歩

だけど、腕ははずれなくて、結局、仲良く手を繋いで腕をぶんぶん振っているカップルのように、二人の腕が繋がったまま上下に揺れるだけだった。



「…お前、何してんだよ…」



さっきのようには怒鳴り声をあげないで、静かに、怒りの色を露にするコウタ君にさっきよりも恐怖心を抱いた。



「…別に、何もしてな……」

最後のほうは涙がこみ上げてきて、ちゃんと言葉にはならなかった。




「……正直に言え」




静かにそう言ったコウタ君にもう、いっそのこと全て話してしまおうかと思ったほどだった。



だけど……
『助けて』なんて言葉、私には言う権利もない…。



「…何もない…」


このままだと涙があふれてきそうだったから、私は俯いてそう言った。