一歩
古典の授業を、半分眠りながら聞いていた私はその音で一気に目覚めた。
何事だと、窓の外を見ると、数台のバイクが校庭をグルグルと回っていた。
「柊君だ!!!」
だれかがそう叫んだ。
その一言で皆が一斉に窓際に走ってくる。
私は皆に押しつぶされ、椅子から転げ落ちた。
キャーキャー騒ぐ女子を尻目に私は立ち上がって、体についた埃を払う。
「大丈夫?」
興奮する生徒の中で唯一冷静さを保っていたのは“悠莉”だった。
「大丈夫だよ」
私はそう言って椅子に座りなおした。