一歩



「柊、変わってないな…」


ボソッと“悠莉”が横でそう言ったのが聞こえた。


でも、その声は教師の「席につきなさい!!」という怒鳴り声にかき消された。



皆が自分の席に戻っていく中、私はそっと、窓の外を見た。


そんな私の瞳に映ったのは金色がバイクに乗って校舎に手を振りながら、走り去って行くところだった。





4時間目が終わると教室が“柊”の話で盛り上がった。



そんな中、私は一人もくもくとお弁当を食べる。


友達を作っていない私に一緒にお弁当を食べる人がいるわけもなく、窓の外を見つめながら弁当を食べる。



さっき通ったバイクの跡が8の字をなぞるように浮き上がっていた。
その跡を用務員のおじさんがせっせとほうきで消していた。




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