‐月のしずく‐
「知也……本当にわからないの?」

「わからないから、聞いてるんだろーが」


あー、苛々するっ。


“これ”がなんなのか知ってるんだったら、早く教えてくれよ!



するとミッチーが、大きく『はあぁ』とため息をついて。


ビシッと俺に指を指した。


ミステリーやサスペンスなどの、よくあるシーン『犯人はお前だっ!!』みたいな感じにね。



「いいか、知也」

「ああ」

「それは“恋”だ」

「へ?」


なんの緊張感もなく、呆気なく言われ、俺はなんともマネケな声を出してしまった。



こい……コイ……KOI?



「……鯉?」


スパーーーッン!!!


「アイタッ!」

「阿呆か! 魚じゃねぇよ!!」


ミッチーはどこから出してきたのか、巨大ハリセンを俺の頭に見事綺麗に命中させた。


これが地味に痛かった……(周りの奴らが俺を哀れな目で見てたのは、無視しよう)。



ミッチーは一息つくと。


俺を真っ直ぐに見てきた。

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