‐月のしずく‐
俺はなんとなく、頭の中で想像した。


俺が知らない男の隣に……春日がいる。

春日はその男に、微笑んでいて。


その時、俺の胸がチクリ、と痛んだ。


俺はその痛みを消すように、ぎゅっと胸を掴んだ。


それと同時に、俺の中でどす黒い靄みたいなのが渦巻く。

そして、心臓がまた、ドクンッと高鳴って。


……気付いた。


ああ、俺。



春日のことが好きなんだって……。


「………そっか」


俺はずっとわからなかった気持ちがなんなのかわかり、ため息をついた。


絡まっていた一本の糸が、解けるように。



春日が好き。


俺はもっともっと、彼女のことを知りたいと思った。



そう、あの泣いていた理由とともに。

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